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パソコンのパの字も知らない

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27回目 ダイヤル式電話機の番号配列は左向きに進む

昔ながらの左向き方向へ

 

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みなさんはダイヤル電話機を使ったことがありますか?

 

僕は使ったことがありません。

それに、これでどうやって番号が押されるのかの仕組みがよくわからないです。

 

ただこのオールドフォンの番号列、左向きに進んでますよね

 

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図であらわすとこんな感じ

https://datagenetics.com/blog/august32015/index.html

より画像引用

 

↑「1」が時計の午後2時くらいの位置から始まり、下に下がるように1~9の昇順で数字が配置され、最後に0で終わっています

 

 

 

今のスマートフォンしかりひと世代前のガラケーの番号列は基本的には右方向へ1ずつ数値が増えていくものです。

 

むしろ、それが通常のことであるという認識で日常的に数字が使われているのはいうまでもありません。

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しかし、↑の写真のようなダイヤル式の電話機はなぜか左方向に番号が増えていきます。

 

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Anand KumarによるPixabayからの画像

ここで疑問に思ったのですが、なぜ旧世代の電話機は左方向に数字が進んでいくのでしょうか?

 

もしかして数字の起源ともいえるアラビア数字やヘブライ語の読む方向が関係しているのでしょうか?

 

ちょっと気になったので調べてみました。

 

〇番号が反時計回りに増えていく「ダイヤル式電話機」

 

僕は以前、「電卓と電話の番号の進む順番は逆になっている」と題した記事を書きました。(下記参照)

 

hajaks.hatenablog.jp

上記記事では、電卓と電話機のキー配置の順番が異なっていることについて書いた内容の記事ですが、この記事を編集するにあたっても電話機の起源について少し調べました。

 

この記事を書くにあたって調べたのが、電話機の初期型でした。

 

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初期の電話交換機 ストローガー自動電話

 

https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co33201

より画像引用

 

上記写真の初期型の電話機(電話交換機)でもやはりダイヤル式が使われていますね。

 

そしてこのダイヤル式電話の起源をたどってみると、なぜ番号が左に進んでいくのかが解き明かされていきます。

 

〇市外局番へ電話をかけるのには数字の若番から使っていた

 

これは電話が試行的に使われ始めてきた時の話、電話番号は3桁番号で構成されていました。

 

この3桁の番号はAutomatic Electric Company(のちにウェスタン・エレクトリック社に社名変更するという企業によって発明されました。そして電話の3つの押しボタンを使用して電話をかけるという方法で使われていました。

 

この電話をかける方法には、すでにダイヤルが使われていましたが操作が複雑なためのちに改められることになりました。

 

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▲アルモン・ブラウン・ストローガ―

そして、アルモン・ブラウン・ストローガーという人物が最初の回転式ダイヤルの特許を出願し、そのシステムを卓上電話機に組み込むことでダイヤル式電話というものが誕生しました。

 

 そして市外局番が最初の決められていく中では、番号割り振り時に3桁番号の最初の100の桁の番号には「1」と「0」がシステム上、割り当てることができませんでした。

 

ちなみに「0」や「1」を先頭桁に使えないのには、「0」が電話交換手のオペレーターにつながる割当として一般割当よりも先に最初の桁に使われていたためでした。

 

そのため、2~9の数字番号を100の位の桁の番号に使うこととなり、若番から昇順に決められることになりました。

 

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上の写真の電話機では、ダイヤルに振られた数字番号は時計で言う5時の位置から「1」ではじまり、反時計周りに「2」、「3」、「4」・・・と続いていきます。

 

最初のダイヤル式電話では下側にダイヤルを時計回りに引っ張った先のストッパーがあるようですね。

 

「1」「0」が使えない3桁番号では、まず「2」が先頭に桁の位置に来る番号が多いことになります。

そのため212、213・・・312や413などダイヤル式の構造上早く電話をかけることができる番号というものが決まっていました。

 

例 「212」はダイヤルを回す長さが少ないため最速で電話をかけることができる

  「909」では最も遅く電話をかけるのに時間がかかる番号

 

◎これらはダイヤルの番号の位置関係上ストッパーまで回す長さが違うため、「2」は最も早く電話をかけられる先頭番号であり、「9」はもっとも遅い先頭番号であった。

 

 

しかし、上記写真の初期型の電話機では時計の7時の位置にストッパーがあり、引っ張るとしたら上側に指で引っ張る形になります。

 

人間は重力の関係上、上方向へ引っ張るよりも下方向に引っ張るほうが軽い力だけで済みます。

そのため、この電話機では上方向に引っ張った先のストッパー部分があるので、これを片手の指でダイヤルを回すとしたら、とても使いづらい電話機であったと言えます。

 

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ヘンリー・ドレイファスがデザインしたウェスタン・エレクトリック社が製造したModel 102

そして、ストッパー位置が変更されダイヤル自体が70度ほど反時計周りに移動させられた後継機が、のちのダイヤル式電話として普及し始めていきました。

 

この電話機ではダイヤルの向きが変わり、下方向へ時計回りにダイヤルを引っ張りながらストッパーの位置までダイヤルを回す、という方法になりました。

 

つまりここまでで番号配列について考えると、

ダイヤル式の電話では番号配列が、初期型では5時の位置から「1」が始まり反時計回りに進み1時の位置に「0」が配置されていたものが、改良を加えられた後継機では、2時の位置から「1」が始まり5時の位置に「0」が配置されるものになった、ということですね。

 

 

もっとざっくりいえば、ダイヤルの位置が変わって番号の位置も伴って変わったということになります。

 

 

反時計周りに数字が配置されていたのは、押した番号からストッパーへ引っ張っていくためですね。

もし「9」などの高い老番が先に電話番号として割り当てられていた場合は、「9」が一番電話をかけるのに早い先頭番号になるということです。

 

 

そして、疑問であった「左向きに数字が増えていく理由」は反時計回りに数字が配列されていったためであったからのですね。

 

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〇番号の割り当ては、電話を掛けられる早さに関係している

 

電話が使われ始めたときには電話番号が、電話機が最も使われるであろう人口が多い大都市から順当に早くかけられる電話番号が割り当てられました。

 

例えば最も早くダイアルできる「212」は、人口が多い都市であるニューヨーク市が選定されました。

次いで213,312などはロサンゼルス、シカゴなどでした。

 

▼以下は早い順に番号が割り当てられた地域

   ・

   ・

   ・

 

と、遠い地域になるに連れて遅い番号が割り当てられていきました。

 

つまりニューヨークなどでは盛んに電話が使われた可能性があるので、最も頻繁的に使われた先頭番号は「2」であり、ダイヤルのストッパーに近い位置にある数字の最若番になります。

 

もっとも離れた地域はアラスカで、ダイヤル式では「907」にダイヤルしようとするともっとも時間がかかります。「9」の位置はダイヤル上ではストッパーから約200度ほど角度が離れているので、引っ張っていくのに時間がかかるでしょう。

その次の桁の「0」も5時の角度にあるストッパーまでは引っ張るのには時間がかかります。「7」もこれまたストッパーから離れた位置にあります。

 

 

電話を使う際には、人口の多い都市では皆一同に早く電話をかけて通話をしたかったのでしょうかね。

 

〇若番から始まるのにはパルス式にあり

 

 初期の黒電話などのアナログ電話回線においては、「パルス」という1と0の信号つまりは「接続と切断」により、電話機から電話交換機に信号を送るためにダイヤルパルスという方法が使われていました。

 

そしてダイヤルパルス式電話の代表例が「ダイヤル式電話」でした。

 

ダイヤルパルス、ダイヤル式電話と同じような名前が連続していますが、ここでは信号を送るための内部構造の仕組みががダイヤルパルスであり、その仕組みが搭載されていた電話機がダイヤル式電話、ということになります。

 

回転式ダイヤルでは、電話をかける時にダイヤルをストッパーの位置まで回転させたときにパルスが送信される仕組みでした。しかしこれは初期のころの方法であり、操作が難しく電話をかけるだけに慎重な操作が必要になるためすぐに改良されていきました。

 

改良されたダイヤル式では、ダイヤルをストッパーの位置まで回転させ、そこから放したときにダイヤルパルスの接点が繰り返し開閉され、ダイヤルが最初の位置に戻るときにループ電流が一定のパターンで遮断される、という仕組みでした。

 

 そしてこの「パルス式」というのは電話機が使われていた各国で複数のパターンに異なっていました。

 

●普通操作の北米式では1つのパルス操作

北米の電話では通常通りの操作で、例えば「2」にダイヤルするときに、まず文字盤の2の位置の輪に指を入れて右下の5時の位置にあるストッパーまでダイヤルを回します。

そして指を引き抜き、ダイヤルを放して回転ダイヤルが初期位置に戻る動作によって、電気接点が2回開閉し、2つのパルスが送信される仕組みです。

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1つのパルスに対し1つの信号が送信される

 

●2つのパルス操作で番号送信が逆バージョンのスウェーデン

スウェーデンでは回転式ダイヤルの文字盤が0始まりの1~9の順番で配列されていました。2つのパルスを使用して番号を通知し、「1」「1」とかけることで「9」の信号を送信する仕組みでした。

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スウェーデンでは0先行型の1~9の配置

●ダイヤルの数字列の文字配置が逆なニュージーランド

 ニュージーランドでは、10個の数字つまりは送信される信号のパルスが逆になっていました。そのため、数字の文字盤配置も逆になっており「0」始まりで「1」がダイヤルの7時の位置にあり、下から上に上がっていくようにして番号が配置されていました。

この電話機の場合たとえば、「7」をダイヤルするとパルスはストッパーの位置から「‐3」の位置にあたるので絶対値の「3」となり3つのパルスが生成されるという逆の方式でパルス送信されていました。

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▲数字の順序が逆なニュージーランドの電話機の番号配置

 

 

文字盤における配置の違いは、国や地域によって異なるシステムでした。「0」は「1」 「9」のどちらかに隣接しており、番号の並びは「降順であるか」「昇順であるか」であり、「0」,「1」,「9」のいずれかが右側のストッパーまで回すのに近い位置に配置されるといった具合になっていました。

 

そして日本の「黒電話」は、1933年にアメリカの電話会社「AT&T」に工業デザイナーのヘンリー・ドレイファスが設計した黒い電話機のデザインを、ほぼ外観のものを真似て日本側で制作しました。

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日本で使用されていた4号電話機 

北米式とほぼ同じ外観であり、パルスによる文字盤配置もほぼ同じな同一設計でした。

ダイヤル中央には「受話器を外してからツーという音(発信音)を確かめてからダイヤルを回してください」と日本語で書かれた使用方法が記述されていました。

 

 

そしてダイヤル式は後にプッシュボタン式へ変更されていきました。

 

〇どうしてプッシュボタン式では番号配列は右に進むのか

ダイヤルの精度、ダイヤルの速度、およびダイヤルの操作のしやすさの向上を目的として、ダイヤルは時代の流れとともにボタン式に置き換えられていきました。

 

そして、その時のボタン式の開発では、「(ボタン式は)練習すればどれだけ電話がかけやすくなるのか」についての吟味・改良されながら開発されていきました。

 

各ボタン配置パターンは16パターンほど用意され、どの方法が押し間違いなく電話をかけるのがしやすいかのテストが繰り返しされていきました。

 

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電卓と同じ 3×3 +1型

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元のダイヤル式のボタン配置

 

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時計回り式

 

さまざまなパターンが用意されていましたが、これらで用意されていたパターンの数個はどれも同じパフォーマンスで同じ速度で電話をかけることができました。

 

そのため、現在のレイアウトである「3×3 +1型」はデザイン的に一番視認性が高いという理由で決定されました。

 

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1先行の配列で3×3 +1型

この正方形の配置に関しては設計の際の工学的な利点を持っており、量産的にも設計しやすいデザインであったので、そのほかの各パターンは排除されていき、最終的には「1先行の3×3 +1型」に決定されました。

 

右に数字が進む理由としては、やはり電話をかける時のダイヤルを回す方向が時計回りの右回しであったことが、のちのボタン式の配置にも影響が出たのだと思います。

数字であってもアルファベットのように左から右への読みで並べていったほうが読む方向としても、慣習的に読みやすいと思いますし、採用された「3×3+1型」では1先行であり昇順で0が最後にあるのには回転式ダイヤルでのパルス方式を彷彿させる番号配列ですね。

 

このように先に使用していた数列パターンが、新しく設計する数列の順序にも影響が出るのはやはり人間的な慣習によるものなのでしょうか?

慣れ親しんだ番号配列のほうがしっくりくるというのは、電話機でなくとも人間工学的なデザインを設計するときにもあるのではないでしょうか。

 

 

ともあれ、今回は久々に大学のレポート執筆並みの勢いでブログを書いてしまいました。

警察が「110番」で消防が「119番」の理由って? 3桁番号が制定された意外な経緯|TIME&SPACE by KDDI

昔のモノのデザインも、結構当時の歴史的背景も入り混じっていたりして面白いモノがありますね。

 

それではまた次回で。

 

バイナラ。